No.032

UPDATE2016/6/1

環境

大きな体に優しい眼差し。ディレクターチームの年長者として、若いメンバーたちを父親のように接する飛嶋勉。自身の若かりし日を振り返りながら語った、働く「環境」への想いとは?

環境から、逃げた

初めて就いた仕事は、印刷会社のDTPオペレーター。印刷技術のデジタル化がやっとはじまったような時代で、私の入社した年にDTP部門が新設されたんです。数名で立ちあがった部門にいきなり配属されました。それまで、PCを触った経験もほとんどなかったので、部屋に並んだMacを見て「これはハードディスクですか?」と聞いてからかわれたのを覚えています(笑)。実務をこなしながら、DTPソフトの使い方を勉強する日々。今主流のInDesignじゃなくて、QuarkXPressというソフトが採用されていました。若い人は見たことないんじゃないかな?

新しいことを勉強するのは好きなので楽しかったのですが、とにかく忙しかったですね。労働時間は過去の職場のなかでも一番長かったように思います。デジタルの需要が急速に高まっていった時期だったので、仕事量が多くって。最初、アナログとデジタルの部門の人数比は9:1くらいだったんですが、ほんの2年くらいで逆転していましたから。

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印刷以外の業界もデジタル化の波が来ていて、特にWEB制作業はバブルみたいな状態でした。ちょっとしたWEBサイトをつくれるだけで重宝されたので、荒稼ぎした人もいたようです。実は私も少しだけですがそんなバブルの恩恵を受けた一人。働きながら土日にデジタルハリウッド大学の講座に通ってHTMLやFLASHの勉強し、会社を辞めてフリーランスになりました。興味のあるWEBやFLASHの世界に行ったと言えば聞こえはいいですが、今思えば残業のつらさや上司とそりが合わなかったことからの「逃げ」だったのかなと思う部分はあります。
私は昔気質な人間なので、ころころと転職するのは少し抵抗があって、1つの会社で学べることは学びきりたいタイプ。だから、新卒で入った会社を3年に満たずに辞めてしまったことには少し後悔があります。プラスディーで紙物を扱う機会があると余計にそう思いますね。もっと紙のことに詳しくなってから辞めれば良かったって。

環境に、向き合った

その後、WEBのバブルは早々に弾けたし、競争が激しい中で営業して仕事を獲ってくるようなスキルもなかったので、半年ほどで会社勤めに戻ることに決めました。1社目の反省もあって、2社目、3社目として入った会社はそれぞれ7年ずつ務めました。特に2社目は自分なりにやり切ったと言えるところまで働けたかと思います。

2社目は先に転職していた1社目の同期の誘いで入った、DTPの制作会社。私はその同期と一緒にSony Music Communication(以降、SMC)に出向してアーティストのCDジャケットだとか、ゲームのパッケージ周りなんかの担当になりました。かなりメジャーなタイトルにも携われたので、自分がつくったものが世に出ていくのを実感できました。SMCには、いろんなアウトソーシング業者が常駐していて、コストだったりミスの少なさだったりを見ながら、定期的に入れ替えされていたんです。領土の獲り合いじゃないですが、競い合った結果が明確に見えるのがおもしろかったですね。7年やる中で、クオリティを評価してもらって、1フロアすべてを私のいた会社の人間で独占したんですが、そのときはやり切った感がありましたね。誘ってくれた同期への義理もこれで返せたかなと思って、もともと興味が強かったWEBをもう一度やることにしました。

その後、デジタルハリウッドのより本格的な講座に通いました。そこで出会った受講生に頼まれて、少し仕事を手伝ったのが3社目との出会いでした。思えば、いつも人に惹かれて転職してきました。プラスディーに入りたいと思ったのも、前職時代に一緒にプロジェクトを行った人達の人柄に魅力を感じたのがきっかけでしたし。

環境を、変えること

あんまりころころ転職するのが好きじゃないと言いつつ、なんだかんだプラスディーで4社目。それなりに転職を経験してきて思うのは、環境を変えるだけで何かを変えようとしてもうまくいかないということです。環境を変えたことがいい結果につながる場合ももちろんあるんでしょうが、置かれた場所で自分自身がどういう価値を発揮するかを考えないと本質はあんまり変わらないのかなと。
1社に長くいて、会社を成長させていくのって、おもしろいんですよ。自分の価値だけを高めようと会社を転々としていると、“会社にとって良いか悪いか”という感覚は身に付きにくいですよね。でもそういう感覚こそ、人と働く醍醐味なんだと思うんです。

今も、プラスディーという環境のなかで、自分がどう振舞えば会社が成長できるんだろうって考えます。例えば、運用案件のアクセス解析は、最低限であればみんな見られるけれど、専門家はいません。その足りないピースを埋めたいなと思って、Google Analyticsの上級スキルを個人的に勉強しています。プロジェクトチームだって、自分が楽することだけ考えたらベテランスタッフだけでツーカーでやってしまうのが一番早いですが、会社の成長を考えると若手メンバーに経験を積んでもらうのがいい。キャパオーバーの仕事を任せると、失敗したときのリスクや本人のコンディション管理の手間もかかるけれど、そこはあえて任せる。そういう風にして、徐々に環境を変えていくのを楽しいと感じられるようになったら、仕事はもっと楽しくなるとおもいます。

デザインや構築に関して制作メンバーと意見がぶつかると「他のディレクターに比べて譲りがち」という飛嶋勉。そんな彼が「古い人間だからかな」と前置きしつつも「1社で長く務めるほうがおもしろい」という点についてははっきりと言い切る。そこには、社会人歴20余年分の重みがある。

メンバーからのメッセージは飛嶋の入社早々ビッグプロジェクトをともに担当したプロデューサー牧野と、“任せるのにリスクがある”若手代表のアソシエイトデザイナー山中から。

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Ko-taro Makino
とびさんは、関わる人たちみんなが気持ちよく納得して成果が出せるようにすることをとても大事にしている、癒し系ディレクター。 ハイスピードで合理性を追求してしまいがちな自分にとっては、正反対な存在。 「おいおい、何をそんなに急いでるんだい?大事なことはそれだっけ?」……。いつもその背中に気づかされ、学ぶことばかりです。
Ryo Yamanaka
ストレートな指摘はせず、優しく諭してくださる印象があります。デザインに悩んだときに、情報整理のコツやおすすめサイトなどを共有していただいたり、エクセル、パワポ等の資料制作が出来ていなかった僕に編集方法なども教えてくださり、僕を含めた若手社員への歩み寄りには感謝の念が堪えません。 アイスブレイクにお話ししてくださる飛嶋さんの好きな映画の豆知識といった仕事と関係ないものからも、今後吸収していきたいなとこっそり思っています。

飛嶋勉の+D ― Daddy(ダディ)―

温和で話を良く聞き、ほめて育てるタイプな飛嶋は、父親のように慕われる存在。若手の生意気な発言も、大人の余裕で上手く転がす。私生活では未婚子無し。

No.032

Tsutomu Tobishima

印刷会社、レコード会社出向、WEB制作会社を経てプラスディー入社。“マイルド”と称される柔らかなトークで、顧客折衝・内部マネジメントをこなす。大のスターウォーズ愛好家。

PHOTO by Kento Ito : INTERVIEW by Yasuhiro Tanaka : BUILDING by Daon Kim : PLANNING by Kento Ito : EDITING by Kiyotsugu Fujiwara